3大会ぶり3回目のWBC制覇を
果たした日本代表の栗山英樹監督が
4月2日、昨年度から特任教授を
務める北海学園大学の入学式に
出席し、新入生1968人に向けて
スピーチを行いました。
『令和5年度 北海学園大学 入学式』
(令和5年4月28日16:00公開終了)
※栗山英樹 北海学園特任教授の入場は19分頃です。
みなさん、こんにちは。ご入学おめでとうございます。
実は私は1年間、北海学園大学に籍を置いてたのですが、野球の方がバタバタして、なかなかここに来ることができませんでした。侍ジャパンは、世界で戦って帰ってきたばかりですが、今回、一区切りつけて、みなさんの入学式に参加することができました。みなさんは高校時代、コロナの影響できっと、なかなか思ったような高校生活を送れなかった。大変だったと思います。
ただ、逆にその大変な経験、難しかったり、困ったり、苦しかったりをくぐり抜けた経験でしか人は育たない。野球でも同じ、選手は成長しない、とずっと言ってきました。
ですからこれからはみなさんに、その経験を生かして、すばらしい学生生活にしてもらいたいと思います。
ひとつだけ、僕が学生時代に考えていたこと、経験したことを話させてもらいます。
僕は、学校の先生になりたいと思って、教員養成の大学に進みました。でも同時に、どうしても野球をやりたいというのもあった。
しかし、なかなか練習する時間がなかった。週に2回、アルバイトをしないと学生生活が送れない環境にあって困難でしたが、どうしても自分の夢が捨てきれず、プロ野球選手になりたいと思っていました。
だから、授業と授業の合間にたった1人で90分、ウェイトトレーニングをして、また授業に戻る、そういう生活をしていた。
まわりからは「お前何やってんねん?」と見られていましたが、やらずにあきらめたくはない、そういう思いで、ずっと続けていたんですね。そして大学4年の時、プロテストを受けて、まあ、今はテスト生制度はないのですが、幸いなことに合格し、プロ野球界に入っていけたという経験があります。
そして今回、たとえばWBCでも、あれだけ一流の人たちがあれだけの全力を尽くして、あれだけがんばると、多くの人に感動を与えられる。そういうことをみなさん、感じていただけたんじゃないかと思います。
ただ、そこに至る上で、選手全員が才能豊かだったのかというと、そんなことは決してないんだろうと思います。
むしろ、誰にも知られない努力をずっと続けることによって、全員があそこに立って大好きな野球を精一杯やって、だからこそ、これだけ日本のみなさんに喜んでもらえたのだと思います。
WBCでは、勝った瞬間は実は意外と冷静で、「ああ、勝ったんだな」くらいだったんです。でも帰ってきて、多くの人たちが「感動したよ!」と言ってくれた時、ああ、人が喜んでくれるということは、こんなにうれしいことなんだと実感しました。誰かのためにがんばれれば、みなが持っている力が、そのまま引き出されるんだと思います。
今は世界一の選手といわれる大谷翔平選手にしても、大会中、僕も感じたし、本人も感じていたと思いますが、ああいう舞台、自分の力が引き出される舞台があってこそ、さらにレベルが上がっていくんだと思うんですよね。
ですから、僕自身の学生生活の経験も含め、選手たちにもずっと言っていたのは、「できるのかなあ、できないのかなあ」と思うのではなく、「やるか、やらないか」だ、ということ。
高校から入ってきた選手たちはみなさんくらいの年頃だったと思いますが、とにもかくにも、自分が「やる」と決めてやり続けられれば、最後には何か必ず大きな答えが出ると信じています。
最後に、僕が選手にずっと言い続けてきた言葉をみなさんに送って、終わりにしたいと思います。
「挑戦し続けなさい、そして、信じ続けなさい」
何かやっていると、とかくうまくいかない。そうすると、自分に能力がないのでは、と思ったりするものですが、絶対に大丈夫です。人の力というものは、だれしも、ものすごく大きいのです。でも、その大きな力は、自分が「だめなのか」と思った瞬間になくなってしまうのです。だから、自分を信じてあげてください。
本日はご入学、本当におめでとうございました。
感謝のエネルギーが誰かを
喜ばせたいという「決意」に
変わるんだなってことを、
栗山監督や今回の侍JAPANを見て
感じました。
また、余談ですが・・・
僕は今回、栗山監督から「目標」の
上手な伝え方を学びました。
栗山監督が準々決勝のイタリア戦の
前日会見でこう言っていました。
「子どもにも大人にも、夢や元気、勇気を与えることができるならば、侍ジャパンとしての意味がある。だから世界一を目指す」
痺れました。。。
仕事でも管理職はチームメンバーに
毎年今季の目標を伝えていると思います。
でもそのときに、単に数字だけ示して
「これ、達成してね!」と
伝えてはいないでしょうか。
もちろん、数字の達成は大事です。
でも、たとえば、
「昨年対比110%を達成してね」と
数字だけの目標を伝えられても、
正直「やらされ感」が出てしまいます。
ビジョンや志ある人に人はついて来るし
ビジョンや志ある人を人は応援したいんだ
と思いました。
END